例えば、小さなLEDを光らせる電子工作に挑戦してみたいと思ったことはありませんか?Raspberry Piシリーズの一員であるRaspberry Pi Pico(ラズパイ Pico)は、そんなときに大活躍する手のひらサイズのマイコン基板です。初心者でも扱いやすく、価格もワンコイン程度とお手頃なことから、2021年の発売以来、多くの電子工作初心者に親しまれてきました。
例えば、小さなLEDを光らせる電子工作に挑戦してみたいと思ったことはありませんか?Raspberry Piシリーズの一員であるRaspberry Pi Pico(ラズパイ Pico)は、そんなときに大活躍する手のひらサイズのマイコン基板です。初心者でも扱いやすく、価格もワンコイン程度とお手頃なことから、2021年の発売以来、多くの電子工作初心者に親しまれてきました。
そして2024年、待望の新モデルRaspberry Pi Pico 2(ラズパイ Pico 2)が登場しました!Pico 2は初代モデルから性能が大きく進化しており、見た目はそっくりながら中身はパワーアップしています。本記事では、このPico 2が初代Picoと比べてどのように進化したのかを初心者にもわかりやすく解説します。処理性能、メモリ容量、I/Oピン数、無線通信機能、消費電力、ソフトウェア対応など、気になるポイントごとに比較しつつ、具体的な魅力を紹介します。また、どんな人にこの新モデルが向いているのか、活用シーンの例も交えて見ていきましょう。電子工作やプログラミングを始めたばかりの方も、ぜひ一緒にPico 2の進化をチェックしてみてください!
💡豆知識: Raspberry Pi Picoは「マイコン」(マイクロコントローラ)と呼ばれるカテゴリの基板です。同じRaspberry Piでも、Pi 4などのようにLinuxなどのOSが動くシングルボードコンピュータとは異なり、PicoはセンサーやLEDといった周辺デバイスを直接制御するための小型基板です。簡単に言えば「小さなArduinoのようなもの」と考えるとイメージしやすいでしょう。
処理性能の進化: M0+からM33へ
Pico 2でまず注目すべきは、基板の「頭脳」にあたるマイクロコントローラの性能向上です。初代Picoは自社開発チップRP2040を搭載し、Arm Cortex-M0+という省電力CPUコアが2つ、最大133MHzで動作していました。一方、Pico 2に搭載された新チップRP2350では、CPUコアがより高性能なArm Cortex-M33デュアルコアに進化し、動作周波数も最大150MHzに引き上げられています。数字上はわずか数十MHzの差ですが、M33コアはM0+に比べて演算機能が強化されており、同じクロックでも処理効率が向上しています。
では、この性能アップで何が嬉しいのでしょうか?簡単なLED点滅やセンサー値の読み取りといった電子工作初心者の基本プロジェクトであれば、正直初代PicoでもPico 2でも体感差はほとんどないでしょう。どちらもマイコンとしては十分高速で、日常的な工作には困りません。しかし、例えば機械学習のように複雑な計算が必要な処理や、高速に大量のデータを捌くような高度なプロジェクトでは、Pico 2のパワフルなCPUが真価を発揮します。重たい計算をさせても余裕が生まれ、より高度なIoTデバイスやリアルタイム処理にもチャレンジしやすくなるでしょう。
💡豆知識: 実はPico 2の新チップRP2350には、Armコアに加えてRISC-V(リスクファイブ)という別アーキテクチャのコアも内蔵されています。オープンソース命令セットであるRISC-Vコア(Hazard3デュアルコア)を搭載したのはRaspberry Pi製品で初めてです。とはいえ通常のMicroPython利用などではこの部分を意識する必要はありません。上級者向けの隠れた機能として、「Pico 2には実はもう一つ別の脳が積まれているんだ」くらいに覚えておくと面白いでしょう。
メモリとストレージの強化
次に、メモリ容量とストレージ容量の拡大も見逃せないポイントです。初代PicoのRP2040チップではメインメモリ(SRAM)は264KBでしたが、Pico 2のRP2350では約520KBと2倍に増えています。また、プログラムやデータを保存するフラッシュメモリ(外部接続のQSPIフラッシュ)は初代モデルが2MBだったのに対し、Pico 2では標準で4MBに倍増しています。マイコンの世界では数百KB~数MBの違いでも大きな意味を持ち、リソースが倍になることでプログラムの自由度が飛躍的に向上します。
具体的には、メモリが増えたことでより大きなプログラムや多くの変数を扱えるようになります。MicroPythonなどインタプリタを使う場合も、内部で消費するメモリに余裕ができるため、より複雑なスクリプトを書いてもメモリ不足になりにくいでしょう。フラッシュ容量の増加も、コードや画像データ、機械学習のモデルなど比較的大きなデータを載せられる余地が広がります。「少し盛りだくさんな機能を詰め込んだらメモリが足りなくなってしまった…」という事態が起きにくくなるのは、初心者にとっても安心材料ですね。
I/Oピンと拡張性の違い
Raspberry Pi Picoシリーズはブレッドボードに差せる小型DIP基板として作られており、Pico 2も初代と同じピン数・ピン配置を維持しています。GPIO(汎用入出力ピン)は26本(うち3本はアナログ入力可能)で、ピンレイアウトも互換性があります。そのため、初代Pico向けの回路や拡張基板にもPico 2はそのまま差し替えて利用できます。この点は、アップグレードしやすく嬉しい互換性ですね。
では、I/O周りで進化した部分はどこでしょうか。実はデジタル通信系の基本仕様(UARTやSPI、I2Cのチャネル数など)は初代から変わりません。しかしPWM出力のチャネル数が初代の16から24チャネルに増加し、より多くのピンで同時に疑似アナログ出力が可能になりました。PWMとはパルス幅変調によってLEDの明るさ調整やサーボモーターの角度制御を行う機能ですが、チャネル数が増えたことで例えば多数のLEDを個別に調光したり、多足ロボットで大量のサーボを同時制御したり、といった場面でも余裕を持って対応できます。
さらに、RP2040/Picoで話題となったユニークな機能「PIO (Programmable I/O)」も強化されています。初代PicoではPIO用のステートマシンが8つ(2ブロック構成)でしたが、Pico 2では12個(3ブロック)と50%増量されています。PIOはユーザーが低レベルの入出力をプログラマブルに制御できる仕組みで、工夫次第でVGA映像信号を生成したり独自プロトコルのデバイスと通信したりと、可能性が大きく広がります。ステートマシン数が増えたことで、こうした高度な用途で複数のPIO処理を同時並行させやすくなり、拡張性がさらに向上しました。
⚠️注意: Pico 2でもGPIOの動作電圧は3.3Vです。Arduinoなど5Vロジックの機器とは電圧レベルが異なるため、5Vセンサーを直接接続すると故障の原因になります。5Vデバイスを使う際はレベル変換回路を入れるなど、電圧に注意して扱いましょう。
無線通信機能の比較 (Wi-Fi/Bluetooth)
初代Raspberry Pi Picoは無線通信機能を持ちませんでしたが、途中で登場したPico Wという派生モデルで2.4GHz帯Wi-Fi(802.11n)とBluetooth対応が追加され、手軽にIoTデバイスが作れると人気を博しました。Pico 2では、この無線機能付きの「Pico 2 W」が用意されています。搭載されている無線チップ自体は初代Pico Wと同じInfineon製モジュール(CYW43439)ですが、Pico 2 WではBluetooth 5.2(Bluetooth LEおよび従来のクラシックBluetooth両方)までサポートされており、ワイヤレス活用の幅が広がっています。
Wi-Fi機能自体は初代Pico Wから引き続き2.4GHz帯のみの対応ですが、MicroPythonやC言語向けの公式ライブラリが整備されており、初心者でもセンサーの計測データをクラウドに送信したり、スマホと連携して遠隔操作したりといったIoTプロジェクトを簡単に試せます。もちろん無線機能が不要であれば通常のPico 2(無線なしモデル)を選べばOKです。価格はPico 2本体が約5ドル、Pico 2 Wが約7ドル程度と僅かな差なので、将来的にIoTに挑戦したい方は最初からPico 2 Wを入手しておくのもおすすめです。
消費電力と省エネ設計
性能向上に伴って気になるのが消費電力ですが、Pico 2ではプロセッサ自体の省電力性も最適化されています。RP2350チップではArm Cortex-M33コアが採用されたことで電力効率が向上し、同じ処理を行う場合に初代Pico(RP2040)より消費電力が抑えられる傾向があります。また、初代同様にスリープモードや休止(ドーマント)モードといった低消費電力状態をサポートしており、使わないときには極めて微小な電力しか消費しません。
例えば電池駆動の環境センサーを作る場合、センサー計測の合間はPico 2をスリープさせておくことで電池寿命を延ばすことができます。性能が上がったからといって極端に電池持ちが悪くなる心配はなく、むしろ効率化のおかげでより省エネに動作させることも可能です。卓上でUSB給電しながら動かす用途はもちろん、工夫次第でモバイルバッテリーや乾電池駆動の工作にもPico 2は適していると言えるでしょう。
ソフトウェアサポートと互換性
ハードがいくら進化しても、それを使いこなすソフトウェア環境が整っていなければ初心者には手が出ません。その点、Pico 2はソフトウェア面でも万全のサポートが提供されています。基本的な開発スタイルは初代Picoと同様で、公式のC/C++ SDKを使った本格的なネイティブ開発はもちろん、MicroPythonによる手軽なプログラミングにも対応しています。Pico 2発売時にはMicroPythonの対応が少し後追いになりましたが、現在では公式サイトからPico 2用のファームウェアが入手可能で、初代と同じようにPythonスクリプトで制御ができます。
また、コミュニティ主導のArduino開発環境(Arduino IDE対応)やCircuitPythonなど、初心者に優しいプラットフォームもPico 2に対応が進んでいます。つまり、「言語や開発ツールが違うから戸惑う」といった心配はほとんど不要です。初代Pico向けに数多く公開されているサンプルコードやライブラリ資産も、大部分はPico 2でそのまま動作します(※一部ハードウェア固有の低レベルコードを除く)。Pico 2は新しいボードですが、既に成熟したソフトウェアエコシステムに支えられており、初心者でも安心して開発を始められます。
活用シーンの例
最後に、Pico 2の強化されたスペックが具体的にどんなプロジェクトで活きてくるか、いくつか活用シーンをイメージしてみましょう。
- IoTセンサー・スマートホーム: Wi-Fi搭載のPico 2 Wを使えば、温度や湿度などを測る無線センサーを作成し、家庭内のWi-Fi経由でクラウドにデータを蓄積したり、スマートフォンで遠隔モニタリングするといったIoTプロジェクトが簡単に実現できます。Bluetooth対応により、BLEビーコンやスマホとの直接通信も可能で、スマートホームの幅が広がります。
- 小型AI・機械学習: 性能とメモリが向上したPico 2なら、簡易的な機械学習モデルを組み込んだデバイスにも挑戦しやすくなります。例えば、人の声を簡単に識別する音声アシスタントや、加速度センサーのパターンからジェスチャー認識を行う装置など、初代Picoではメモリ不足で難しかったAI系のプロジェクトも、Pico 2なら可能性が広がります。
- ロボット制御: 複数のモーターやセンサーを搭載したロボットを制御する場合にも、Pico 2の強みが活きます。PWMチャネル増加により多数のサーボモーターを個別に制御できますし、高速なデュアルコアCPUのおかげでセンサー情報の処理とモーター制御を並行して行っても余裕があります。高度な自律走行ロボットやドローンのようなリアルタイム性が求められる工作にも、Pico 2は力強い味方となるでしょう。
- ユニークな電子ガジェット: Picoシリーズの醍醐味であるPIO機能を活かし、ユニークなハードウェア工作にもチャレンジできます。例えばPicoを使ってレトロゲーム機のように映像信号を生成しモニターに表示する、独自の楽器インターフェースを作る、複数のセンサーから同時に高速データ収集する…等々、Pico 2なら複雑なガジェットを作ってみたい上級者の遊び心にも応えてくれます。
Pico 2はこんな人におすすめ
- 電子工作・プログラミングを始めたい初心者: これからマイコンを触ってみたいという方には、最新のPico 2がおすすめです。初代Pico譲りの手軽さはそのままに、将来ステップアップしたときにも困りにくい余裕のある性能を持っているため、入門機として長く使えます。
- IoTや無線通信に挑戦したい人: Wi-Fi/Bluetooth搭載のPico 2 Wは、無線ネットワークを使った工作に最適です。センサーノードからスマートホーム、ウェアラブルデバイスまで、インターネットやスマホと連携するプロジェクトを考えているなら、迷わずPico 2 Wを選ぶと良いでしょう。
- より高度なプロジェクトに取り組みたい人: PIOを駆使した特殊なガジェット作りや、機械学習の実装など、ハードウェアの限界に挑むようなプロジェクトを視野に入れているなら、性能と拡張性に優れるPico 2が心強いパートナーになります。より大きなメモリや高速CPUのおかげで、創造力を存分に発揮できるでしょう。
- 既に初代Picoを持っている人: 今手元にある初代Picoで特に不満がなければ、無理に乗り換える必要はありません。基本的な使い方やできることは両者で大きく変わりません。ただし「メモリがもう少し欲しい」「無線機能が欲しい」と感じていたなら、Pico 2やPico 2 Wへのアップグレードでその悩みが解消するかもしれません。価格も手頃なので、用途に応じて買い足してみるのも良いでしょう。
まとめ
ここまで、Raspberry Pi Pico 2の進化ポイントを初代モデルとの比較で見てきました。高速化したデュアルコアCPU、倍増したメモリとフラッシュ、拡張されたPWMやPIOによるI/O能力、そして無線通信対応の強化(特にBluetooth 5.2対応)など、Pico 2は随所にパワーアップが施されています。それでいて、小型で扱いやすい形状や手頃な価格といったPicoシリーズの魅力はしっかり受け継がれています。
電子工作・プログラミング初心者にとっても、Pico 2はこれから長く付き合っていける頼もしい入門ボードと言えるでしょう。既に初代Picoに親しんでいる方も、更なる高みを目指すプロジェクトのお供にPico 2を導入する価値は大いにあります。Raspberry Pi財団もPico 2世代のラインナップ拡充を予告しており、今後ますます盛り上がっていくことでしょう。ぜひ新しくなったPico 2の可能性を活かして、あなたのアイデアを形にしてみてください!
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